ひぐらしのく頃に 二次創作SS

紅い世界の中で

 


 

 夕暮れが、世界を紅く紅く染めている。それはさながら血まみれの世界が広がっているようで、私はちょっとだけ、気分が悪くなった。
 そんな道を一緒に歩いてるのは、圭ちゃん。さっき私のバイトが終わったばっかりで、たまたまお店に来ていた圭ちゃんと一緒に雛見沢に帰る途中だったりする。
 まぁ、たまたま、とは言っても……きっと圭ちゃんのことだから、私に……うぅん、お姉ぇに会いたくて、わざわざ興宮まで出向いてきたんだろう。お姉ぇは羨ましい。こんなに想ってくれる人がいて。それも、お互い想いは伝わってないかもしれないけど、私は知ってる。二人が両想いだ、っていうこと。

「し、詩音……寒くないか?」

 急に、少しだけ前を歩いていた圭ちゃんが私にそう話しかけてきた。

「何言ってるんですか、圭ちゃん。もう夏ですよ? 寒いわけないじゃないですかー」
「そ、それもそうか……はははっ、何か俺ボケちまったみたいだな……」

 緊張してるのがとてもよくわかる。あははっ、そういうとこ可愛いです、圭ちゃん。後ろからだとよくわからないけど、きっと顔は真っ赤になってるのが丸わかりです。
 頬をぽりぽりと掻きながら、圭ちゃんは少しだけ歩くスピードを遅くする。そして……前を向いたまま、すっ、と腕を差し出してきた。

「……圭ちゃん?」
「本当に……ボケちまったみたいだ。俺、何か妙に寒くてさ。……手ぇ、繋いでくれるか?」
「……あははっ、仕方ないですねー。私が圭ちゃんの手を暖めてあげます♪」

 そう言って、優しく圭ちゃんの手を握る。
 ……私はナニをやってるんだろう。

「詩音」
「はい? 何ですか?」
「……いや、何でもない」

 今日の圭ちゃんは、妙に積極的です。普段お姉ぇにも、こんなことをやってるのかな……。
 私達は、無言で商店街を歩いて……気づいたら、雛見沢と興宮の境まで来てしまった。あぁ、もう戻らないと。私は魅音じゃないのだから。
 自然と足を止める。圭ちゃんが、ここでやっと私の方へと振り返った。

「圭ちゃん……私は用があるから、ここで別れますね」
「あぁ。……気をつけてな、詩音」
「はい、ありがとうございます。それじゃ」

 圭ちゃんの顔は、太陽の逆行でいまいちよく見えなかった。
 だからだろうか。
 そんな圭ちゃんの顔が……優しい笑顔を浮かべて私を見送ってくれる圭ちゃんの顔が、あの……悟史くんとそっくりに見えてしまって。
 私は少しだけ、涙を流してしまった。

「……詩音?」
「あっ、何でもないですよ! ちょっと太陽が眩しかっただけですから」
「詩音……」
「あはは、そんな心配しないでいいですよー。本当に大したことじゃないですから……っ……!?」

 気がつくと。
 私の体は、圭ちゃんに抱きしめられていて。
 圭ちゃんの顔が、私の目の前にあって……。

「け、けけけ圭ちゃん!!??」
「……好きだ、詩音」
「いきなりなにを……って……はい?」
「俺は、詩音が好きだ」
「け、圭ちゃんが好きなのは、私じゃなくて……」
「違う。魅音じゃなくて……詩音が、好きなんだ」

 本当に……いきなり何を言ってるんだろう、この男は。
 いきなり人にキスしてきて。魅音じゃなくて詩音が好き?
 あはは、意味がわからないです。圭ちゃんは私とお姉ぇを一人だって勘違いしてるはずなのに。

「はぁ……お姉ぇに言いつけちゃいますよ? 今なら冗談で聞き逃してあげますから、その台詞はお姉ぇに言ってくださいね?」
「違う、詩音! 俺はお前のことが……!」
「それじゃ、私用がありますから。また明日です、圭ちゃん!」
「詩音!!」

 言い捨てて、興宮の方へと駆け出す。
 あんな勘違い男と話してなんかいられない。
 

 圭ちゃんは魅音が好き。魅音も、圭ちゃんが好き。それでいいじゃないですか。
 それを「詩音が好き」だなんて、タイミングを間違えるにも程があります。圭ちゃんの中での詩音は魅音なんですから、魅音のときに言えばいいんです!
 それを何で……何で「詩音」の時に言うんですか!?
 それも、「魅音じゃなくて詩音が」だなんて……気づいてるはずないのに!
 そんなこと言われたら……私は……私は……!

 

「私は……どうしたらいいんですか……悟史くん……。」


End  

 


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